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〜 私設 「北野晶夫の世界」 〜

 

- 小説「汚れた英雄」に登場する人物 -

 


 

登場人物名

 

カルロ・ウッビアリ

 

 

 

 

 

最初の登場頁

 

第U巻 雌伏篇 P.93

 

 

 

 

 

小説上の人物像

 

野村が晶夫のアパートを訪れた際に、晶夫が所有するMV Agusta350を目にしたシーンで登場するのが最初。

その後、世界GPの描写の中で何度か登場し、晶夫が1960年シーズンにMV Agustaに加入た際には、中・軽量級のエースライダーとして晶夫と共に世界GPを走る。

 

 

 

「MV、A・J・S、それにヤマハYA1の3台のうちのMVアグスタ350に野村は跳びついた。

「俺は夢を見ているんじゃないだろうな? MVレーサーが日本に入ってきているとは知らなかった!」

と、シートにまたがって上体を伏せ、疾走中のポーズをとる。

「浅間では使い物にならないよ、路面さえ舗装されていたら...」

「これで走ってみたことはあるの?」

野村は上ずった声で叫ぶように尋ねた。

「何回かね。一度死にそこなったけど」

「凄いマシーンだ。こうやっているだけで、サーディスかウッビアリになったような気がする!」

野村は恍惚とした表情で叫んだ。

 

 

(第U巻雌伏篇 P.93)

 

 

 

ウッビアリは来ていた。晶夫の肩ほどしかない28歳の小柄なウッビアリは、着かざった女に話しかけられて顔を赤らめている。まだ独身の筈だ。

入ってきた晶夫を見て、ウッビアリの顔が引きしまった。農民風の風貌だ。晶夫とウッビアリの視線が中で切り結ぶ。内気そうなウッビアリのポーズが一瞬消え、ふてぶてしい闘志がむき出しになる。

ネロ・パガーニが二人を紹介した。晶夫は手をさしのべてウッビアリに近づいた。ウッビアリは瞳の炎を消し、眼をしばたきしながら握手を返した。細い芸術家のような指だ。

 

 

(第V巻黄金篇 P.188)

 

 

 

 

 

実際の人物像

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルロ・ウッビアリ ( Carlo Ubbiali )

1929年(昭和4年)9月22日 イタリア/ロンバルディア州ベルガモ生まれ。

世界グランプリがスタートした1949年にMV Agustaで初出場、1960年(昭和35年)に30歳という若さで引退するまで中・軽量級で活躍し、通算9回の個人タイトルを獲得した。この記録は、2013年末現在、バレンティーノ・ロッシおよびマイク・ヘイルウッドと並び、ジャコモ・アゴスチーニ(15回)、アンヘル・ニエト(13回)に次ぐ歴代3位の記録に相当する。

また、1949年から1960年までの12年に渡る世界グランプリのキャリアの中で一度も大きな転倒や事故を起こしたことがなく、非常に安定した走りを見せるライダーでもあった。

 

 

ウッビアリは、1949年(昭和24年)に始まった世界グランプリの125ccクラスにMVアグスタ125で出場しランキング4位を獲得する。

1950年にはモンディアルに移籍、第2戦アルスターGPで初優勝を飾りこの年ランキング2位を獲得、翌1951年もモンディアルで出場し125ccクラスのチャンピオンを獲得する。

1952年にMV Agustaのシル・サンドフォード(米)にタイトルを奪われると、ウッビアリは再びMV Agustaに移籍する。

1953年(ヴェルナー・ハース)、1954年(ルパート・ホラース)と2年連続でNSUにタイトルを奪われるが、1955年および1956年は125ccクラスに加え250ccクラスにも出場し2年連続でダブル・タイトルを獲得する。

1957年は第3戦オランダGPの予選中にクラッシュし以降3戦を欠場、タイトルを逃す。

1958年は、125ccクラスこそタイトルを奪還するものの、250ccクラスはMV Agustaに新たに加わったタルクィニオ・プロヴィーニ、MZのホルスト・フェグナーにタイトル奪還を阻止される。

1959年は、125ccクラス、250ccクラスとも同じMV Agustaに乗るプロヴィーニとのチャンピオン争いになるが、安定した走りでウッビアリがダブル・タイトルを獲得、1960年もプロヴィーニに代わってMV Agustaに加わったゲイリー・ホッキングとの争いとなったが、ウッビアリが2年連続でダブル・タイトルを獲得した。

 

しかし、1960年末にウッビアリのマネージャを務めていた弟のモーリスが病死、ウッビアリは父親とモーリスが営むディーラーを引き継がなければならなくなり、1960年をもってレース界から引退した。

 

 

 


 

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最終更新:2014/02/02

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