211-02-3-22

〜 私設 「北野晶夫の世界」 〜

- 第4回富士登山レース -

 

【 第2回大会の模様 】

1954年(昭和29年)7月8日


 

 

前年に続いて開催された第2回富士登山レース は7月8日に 前年と同じ富士宮市浅間神社〜富士山2合目までの27km区間で開催された。

前年は法令に従って軽二輪車は4サイクル・エンジン搭載車が150cc、2サイクル・エンジン搭載車が90cc以下とされていたが、この年は法令の改正に従っ て4サイクル・エンジン搭載車が250cc、2サイクル・エンジン搭載車が150cc以下とされたのと同時に、前年の混合戦の反省をふまえて ライトウェイト・クラス(軽二輪車)とバイクモーター・クラス(原動機付自転車(4サイクル・エンジン:90cc、2サイクル・エンジ ン:60cc以下))の2クラスに分けられることになった。

 

 

 

 

 

トップタイムでゴールするコレダ号の山下林作選手

 

 

 

 

また、出場車の規定が明確化され、ギア比の変更などが一切認められない完全なる「標準車」とされた。このため、このレースで勝利したオートバイは実用車としての耐久性とスピードの性能を一般に示すものとして、出場を申し込んだ各メーカーが力を入れるレースとなった。

参加車両は、軽二輪車としては、モナーク、ホンダ、オートビット、ツバサ、DSK、晶和などで合計63台、原動機付き自転車ではコレダ(スズキ)、キティ、ホンダベンリィ、ダイヤモンドフリーなどで合計34台がエントリーした。

 

当日は午前約7:00に浅間神社 境内に集合、開会式の後、前日に車検を終えていた出場車は午前9:30から1分間隔でスタートするタイム・トライアルで争われた。

当日の天候は、スタート地点から1合目までは梅雨空ながら晴れているものの、その先は2合目のゴールまで10m先も見えないほどの濃い霧に包まれた中での開催となった。また、コースは連日の梅雨による雨のため、前年よりも湿った状態の路面コンディションとなり、厳しいレースとなった。

 

 

ライトウェイト・クラス(軽二輪車級)では、前年に34分台の最速タイムを記録しながら失格扱いとなった晶和が、この年の主力であるサイドバルブ・エンジン車(注:クルーザーSC型)ではなく、OHCエンジン車(注:晶和SS型:196ccと思われる。)を走らせるために、勝敗を度外視した出場と見られ、地元のDSKが最有力候補、それにツバサ、ポインター、ポニーモナークなどが候補としてあげられた。

ライトウェイト・クラスの決勝結果は以下の通りである。

 

 

順位

選手名

出身地

メーカー

タイム

記事

1

中島信義

沼津

モナーク

29' 44" 5 

 

2

井上武蔵

蒲原

D.S.K

31' 06" 5

 

3

喜井 進

東京

モナーク

31' 47" 0

 

4

田中公誠

東京

モナーク

31' 51" 4

 

5

五十嵐章隆

蒲原

フジ

31' 57" 0

 

6

藤島茂久

富士

ポインター(エース)

32' 42" 0

 

7

杉山義雄

沼津

モナーク

32' 43" 0

 

8

谷口 弘

浜松

ライナー

33' 01" 3

 

9

青山高美

蒲原

ポインター(コメット)

33' 14" 7

 

10

野村弘道

榛原

ロケット

33' 27" 0

 

 

 

 

中島信義選手の優勝は、前年の第1回にはポニーモナーク(150cc)を駆って準優勝したが、その雪辱を果たすべく事前に全コースを徹底して調べた結果であると同時に、中島選手が乗ったモナーク(注:モナーク250 M3:226ccと思われる。)は、合計5台(うち1台は個人出場)が出場し1、3、4、7位入賞し、メーカー賞に値し優れた性能を示した結果となった。

優勝タイムは、排気量が前年と比較して100cc拡大されたことから出力も増加したため、前年に晶和SHが記録した34'55を約5分以上短縮する29分44秒を記録した。

 

 

バイクモーター・クラス(原動機付自転車級)ではコレダ(スズキ)、ヤマトラッキー、セントラルなどの地元メーカーが優勝候補として挙げられていた。

バイクモーター・クラスの決勝結果は以下の通りである。

 

 

順位

選手名

出身地

メーカー・マシン

タイム

記事

1

山下林作 浜松

スズキ/コレダCO

41' 32" 8 

 

2

日吉 昇 藤枝 ラッキー

41' 39" 0

 

3

小長井 茂 藤枝

ラッキー

42' 29" 7

 

4

岡田輝夫 浜松

セントラル

42' 43" 8

 

5

高井源治 浜松

セントラル

43' 37" 6

 

6

鈴木秀夫 磐田

コレダ

43' 50" 4

 

7

北村 誠 浜松

ヤング

44' 35" 2

 

8

岩崎研一 静岡

セントラル

47' 16" 2

 

9

渡辺昭男 鷹岡

キティ

47' 36" 0

 

10

神谷安則 浜松

コレダ

47' 43" 3

 

 

 

 

結果は、予想を裏切って前年にバイクモーターでトップタイムを記録した山下林作選手が、コレダ号で優勝、タイムは前年の58分59秒を実に17分以上短縮する41分32秒を記録し優勝、第2位に入った日吉 昇選手がわずか7秒差でゴールしたが、日吉選手は1合目〜2合目間で転倒し右腕骨折および顔面擦過傷と言う負傷ながらレースを継続しての入賞だった。

 

ライトウェイト・クラスにおいても、バイクモーター・クラスにおいても前年の記録を大幅に短縮したことは、わずか1年の間に、国産オートバイの性能が著しく向上していることを示すものとなったのである。

 

 


 

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(最終更新:2017/03/14

 

 

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