最終更新:2017/02/19

 

〜 私設 「北野晶夫の世界」 〜

 

- 映画 「汚れた英雄」 -

あらすじ

 


 

 

 

 

 

 

 

 

全日本ロードレース選手権第8戦、メインレースとなる国際A級500ccクラス決勝を迎え、SUGOサーキットは興奮の渦に包まれていた。

 

ここまでの成績は、晶夫が96ポイントでランキング1位、YAMAHAの期待を背負い3年連続チャンピオンを狙う大木がランキング2位、そしてランキング3位には売り出し中の ルーキー鹿島健がつけている。

プライベート・ライダー北野晶夫とファクトリー・ライダー大木圭史の対決、それはプライベート・チームとファクトリー・チームの対決でもあった。

 

そしていよいよ決勝レースがスタートした。

いつものように晶夫がホールショットを決める。そして9周目にはコースレコードを叩き出すすばらしい走りを見せる。かつて世界グランプリを戦ってきたヨーロッパ仕込みのライディング・テクニックは健在であった。

トップを走る晶夫、しかし激しい走りで晶夫に迫る大木に最終ラップのストレートでトップの座を奪われそのままゴール、フロントホイールひとつの差で大木に敗れてしまった。

この結果、晶夫と大木が同ポイントで並び、勝敗は2週間後の最終戦日本GPに持ち越されることになった。

 

 

 

 

 

 

 

マシーンの差が敗因なのは明確だった。それはプライベート・チームとファクトリー・チームの技術と組織の差でもあった。

晶夫はすぐさま<TEAM KITANO>の チーフ・メカニックである雨宮にマシーンのチューン・アップを命じた。

来るべき最終戦日本GPこそ、全日本の頂点に立ち、個人の力で世界を制す栄光へのステップでもあるからだ。

 

究極のライディングにすべてを賭ける晶夫に惹かれて昌夫についてきた雨宮と、かつてライダーの仲間であった緒方は、その日から全力でマシーンのチューン・アップに挑んだ。

緒方の妻でチーム・マネージャーのあずさ、それにあずさの息子和己を加えて、<TEAM KITANO>は2週間後の最終戦日本GPに向けて始動した。

 

 

 

 

 

その一方で、プライベート・チームを維持するには莫大な資金を要する。

晶夫のもうひとつの顔は、恋のライダー即ち “ジゴロ” であった。天性の美貌と強靭な肉体、そして華麗なセックス・テクニック。これらが、栄光へと昇りつめていくための晶夫の大きな武器なのだ。

 

その昌夫のスポンサーとして、すでに国際的なデザイナーである斎藤京子の存在があったが、新たに財閥の令嬢・御木本菜穂子が晶夫に近づき、晶夫は彼女を確実にモノにして新たなスポンサーを得る。

 

しかし、世界を狙うにはさらに膨大な資金が必要となる。昌夫は折から来日したクリスティーン・アダムスに的をしぼった。10億ドルの遺産を父親から相続し、国際的なコングロマリットのオーナーである彼女のことは、ヨーロッパにいた頃からすでに知っていたのである。

 

晶夫はパーティでクリスティーンと再会し、その晶夫の華麗なる誘惑に難攻不落を思わせたクリスティーンも陥落、10万ドルの小切手をモノにする。

 

 

恋のライディングは着々と成果をあげたが、肝心のマシーンの性能アップは思うように進んでいなかった。メカニックの雨宮が女の事で作業をスッポかしていたからである。
晶夫は雨宮を解雇し、この時から緒方と共に徹夜で自らマシーンのチューンナップに取り組み、そして妥協をゆるさぬ孤独な鍛錬をくり返していった。

 

 

 

 

 

 

そしていよいよ最後の決戦の時が来た。

 

全日本選手権最終戦日本GP国際A級500cc決勝レース。北野晶夫、大木圭史、鹿島健、そして多くの 出場ライダーたちを大きな声援が取り囲む。

 

決勝レースのスタートが切られ、各ライダーが一斉に走り出していく中で、昌夫のマシン だけがなかなか始動できずにいた。ようやくエンジンに火が入った晶夫は最下位からのスタートとなってしまうが、まるで何かに憑かれたような凄まじい走りで急激に順位を回復していった。

しかし38周目、スタートの失敗から猛然と追いあげて来たその晶夫にアクシデントが襲いかかる。

「北野晶夫ヘアピンで転倒っ!」

悲鳴のような場内アナウンスに3年前の世界選手権の悪夢が甦る・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

しかし晶夫は立ち上がった!

傷ついたマシーンを引き起こし、再び走り始めた。そしてさらにペースを上げて宿命のライバルを追いかけて行く。

不死鳥のような見事なライディングによって、晶夫はトップを走る大木と鹿島の背後に迫る追い上げを見せた。

 

そして最後の1周!

晶夫と大木の気迫の走りについていった鹿島は自分の限界を超え、ついに転倒を喫しトップ争いから脱落してしまう。

そして最終のヘアピン、晶夫の凄まじい執念が大木を上まわった。追いすがる大木を振りきって晶夫がゴールラインに駈けこむ。ついにプライベート・チームがファクトリーを破ったのだ!

興奮の渦の中、大勢の観客たちに抱え上げられ感情を爆発させる晶夫・・・・・。

 

3年間のともに戦った時間に終わりを告げ、<TEAM KITANO>は解散する。和己の「グッバイ・ヒーロー」という別れの言葉で、再び、より険しく孤独な戦いに向かう晶夫・・・・・・。

 

 

翌年の世界選手権の成績がテロップで流される。

 

 

1983年世界選手権ロードレース500cc

 

第1戦フランスGP リタイア

第2戦スペインGP リタイア

第3戦西ドイツGP 15位

第4戦オーストリアGP 6位

第5戦イギリスGP 2位

第6戦ダッチTT 優勝

第7戦ベルギーGP ・・・・・

 

7月4日 ベルギー、スパ・フランコルシャンサーキットにて、北野晶夫・・・・・死亡。

 

 

なお、北野昌夫役には草刈正雄、ライダーとしては '83〜'85年の全日本500ccクラス・チャンピオン平 忠彦が演じている。

 

 

 

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最終更新:2017/02/19

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